Sunday, December 07, 2008

早明ラグビー

 早稲田が負けた。だが、見ていて良い試合だったと思う。ハラハラしたもの。
 
 内容的に見てどうかというと、諸手を挙げて賞賛するようなものではなかった。早稲田は今シーズン2敗を喫し、久しぶりに対抗戦優勝を逃した。ラグビーが好きだが今シーズン試合を見たのは今日が初めてで、優勝を逃す原因となった帝京戦などは当然見ていない。結果だけを知って、ええっ、何故? と思った。だが、今日の試合を見ていて、これなら優勝できるわけはないなと納得できたのだった。
 
 それはなぜか? ミスが多いからである。
 
 パスを落とす。そこで落としたらそれまでの連続攻撃が止まってしまう。ラグビーにとってはそれは致命的な失敗なのだ。だがそういうミスを連発していた。もちろん、それは明治の攻めが早くてプレッシャーを受けるから普段なら落とすはずもないボールを落としてしまうのである。だったらプレッシャーを受けないようにすればいい。そういうのは簡単だが、現実には相手も必死なので、受けるべきプレッシャーは当然あるものと覚悟して、そこで如何に冷静にプレイをするのか。それが普段の練習の賜物なのだろう。だが今日の早稲田にはそれが足りなかったように思う。
 
 だが、もしもそういうことも出来ていて、例年のように完璧な優勝を果たしていたとしてもだ、ここ数年の日本選手権で大学チームは社会人に対して勝てていない。それほど社会人と学生では力の開きがある。今日の早稲田がミスをしないチームであっても、それで完璧と言うことはできないのだ。だとすると、学生は学生としての立場ではつらつにプレイをすればいいのだと思う。出来ることを頑張ればいいのだ。高校野球がプロよりレベルが低いとしても、それで面白くないというのはイコールではないし、何より粋ではない。
 
 粋ではないというと、対抗戦を優勝した帝京大学だが、その健闘は讃えたい。だが、今年の帝京大学のチームには外国人選手が多数入っているという。いや、強いかもしれないよ。でも、それでいいのかとか思ってしまう。もちろん早稲田だって明治だって全国のラグビー名門校からスカウトしまくってチームを作っている。そういう意味では外国からスカウトするのとそんなに変わらないという気もしないではないし、卒業後のこととか考えると帝京より早稲田慶応に行こうという選手たちが多いだろうから、帝京が苦汁をなめ続けてきたことへの打開策のひとつといえる。そして外国人選手が全部日本人選手よりも優れているというわけでもないし、そういう意味では外国人選手の何が悪いと言われれば、どこも悪いわけではないが、だからといって素直に納得できない気持ちも拭えない。
 
 昔読んだある4コママンガに、吐痰道というのがあって、多くの人が通る道にも、1日誰も踏まない「目」というべき場所があるという。そこを見つけて痰を吐くというのが吐痰道なのだが、弟子が「踏まないところに吐けば良いんだったら、植え込みに吐けば良いんじゃないですか」といったら師匠は「確かにそこは踏まないだろう。それでいいと思うなら吐いてみたまえ」と答え、弟子は植え込みに痰を吐く。そこで師匠が「面白いか?」と問う。弟子はどんよりした表情で「いや、全然面白くないです」と答える。師匠は「吐痰道の極意は面白さにあり!」と満面の笑みで諭す。
 
 これとスポーツのことを一緒にするわけにはいかないが、やはり、突き詰めていったとしても「面白くない」ということに尽きるのだ。
 
 そういう意味でも今日の早明戦は面白かったのだ。すでに6位が決定していて大学選手権への出場を逃している明治。普通に考えれば戦力の差は明らかで、早稲田は少々なめていたと思う。前半終了間際の戦略、ペナルティゴールを狙うというものに既にそれが現れていた。それはセオリーでもある。しかし時間がないからトライよりも3点だという、確実に点を重ねようという、その表情には冷静というより、冷めたというものを感じた。しかしゴールは外れる。しかも2回もだ。そして後半、明治に立て続けに点を取られ、そこから焦りの攻撃に転じる。明治もそれに真正面からぶつかればいいのに、時間稼ぎの戦略に転じ始める。だが往々にしてそんな逃げの戦略は上手くいかない。早明戦においては特にそうだ。元来あった地力の差が出たのか、早稲田もトライを入れ始める。ロスタイムの最後の最後でトライが入り、最後のゴールが決まれば同点に追いつく。明治も追い込まれた。
 
 だが、無情にもゴールはポールにはじかれた。明治の勝利。やはり舐めてかかってはいけないのだということを、激しく早稲田フィフティーンに思い知らせるという意味でも、ここは点が入らなくて、9年ぶりの敗北を喫したことにも意義はあったし、そうであるべきだったと思う。ボールが逸れていく瞬間に歓喜の明治。彼らにとってはこれが今シーズン最後の試合だから、勝ちで終わってよかったなと思う。一方早稲田にはまだまだ試合があるのだ。対抗戦では負けたけれども、大学日本一を目指して新たな戦いに向かって頑張ってもらいたい。そして、日本人チームでも負けないぞということを示して、本当にこのシーズンは面白かったなと締めくくらせてもらえればいいなと思った。