Friday, December 05, 2008

STONE FREE



 この夏にCDを出したバンド、STONE FREEの3人がキラキラレコードにやってきた。彼らのCDは最近ちょっと売れていて、年内には追加生産にかかることになっている。売れていないバンドからすると羨ましい限りだろうが、本人たちはそれなりに悩みを抱えている。
 
 今日の悩みはまさに「どうやったらもっと売れるんだろうか」ということだった。売れているとはいえ、やはりリリース時直後の勢いはなく、数字の伸びの鈍り方に、かなりの焦りを感じてしまっているというのが実際のところだ。で、彼らとして他になにが出来るのかを僕に聞きに来たというわけだったのである。じゃあ僕が何を言えるのか? なにかの魔法を使って、一夜明けると彼らが大スターになっているような状況を作れるかというと、そんなことはない。もちろん彼らもそんなマジックを期待しているわけではなく、自分たちで出来るなにかをやりたいんだ、やりたいんだけれど、何をやればいいのかわからないから教えて欲しいということだ。それなら答えはある。そのためにもまずは君たちが今やっていることを確認させてくれよ。
 
 彼らは現状の活動を報告してくれた。報告は虚飾に満ちていることもある。ウソはつかないが、どうしてもいいところを誇張して言いたい。それは罪ではない。人間だったら誰しもそうしたくなるものだ。しかしそれでは対策は打てない。だから「じゃあこれはどうしているんだ、そこのところはどうなんだ」と問いただすのが僕の仕事である。そして、上手くいっているところと上手くいっていないところを整理する。そして上手くいっていないところについて改善策を出す。根本的な路線が間違っているようであればそこを一旦壊して、新しくプランを提案する。そうしてバンドの活動はより効率的に、向目的的になっていくのだ。
 
 ただ、新しく提案するプランが諸手を挙げて受け入れられるかというとそうではないことも多い。彼らには彼らの理論とプライドがある。そして決定して進んできた現在の方針だったのだ。そしてこれは意外と忘れられていることも多いが、バンドはバンド内での意見統一が必ずしも出来ているとは限らない。そういうときは、往々にして積極性が弱いメンバーをなだめすかしながら這うように活動を進めてきているという経緯がある。だとすれば、最効率の策がそのまま彼らの方針になっているとはいえないし、そして最効率の策を提案すると、消極的なメンバーが破綻するという危険性だってある。だから次善の、そのまた次の妥協策で動いている場合もある。そういうときには僕の新しい提案は素直には受け入れてもらえない。
 
 また、バンドマンにはバンドマン同士のネットワークというものがある。そこでいろいろとアイディアをもらうことも多い。だが、売れていないバンドの友人はまた売れていないバンドマンであることが殆どだ。そこで聞くアイディアはそのバンドを売れさせられなかったアイディアでしかない。それを金科玉条のようにして頑張っているつもりになっていることもある。キラキラレコードは彼らが売れることによって利益を得る。しかし友達は利益を求めてアイディアを出してなどいない。だから、純粋でピュアだと思われがちだ。そこに騙しは一切無いから安心だと思うのだろう。だが、それではまるで進まないのだ。そのことに気付かずに僕の提案を却下するようだったら、それは成功への限りない遠回りだと言わざるを得ない。
 
 で、STONE FREEに戻るが、彼らもそういう時期があった。今年出したアルバムは2枚目で、1枚目を出したときには独自の路線を突き進みたく、頑張っていたものの結果が付いてこなかった。僕も少し放任していたところ、今年あるきっかけから2枚目を出すことになり、今は僕の提案も取り入れつつ、頑張っているところなのである。それで今日いろいろと話をする機会だったのだけれど、先日提案していたことについて一生懸命やっていて、それなりの成果を得てはいたものの、十分とはとてもいえないような、運用の間違いをしている部分が沢山発見された。それを細かに指摘して、その改善を要求した。一種の目からウロコ状態であり、「ああ、もっと頑張りますよ、やる気満々になりました」という感じでキラキラレコードを後にした。
 
 提案とはなかなか難しいもので、僕が意図していることを完全に他者に伝えるのが簡単ではない。いつも思うことだが今日もまたそれを再認識した。だからこそ細かな修正が必要であり、ことあるたびにこうしてミーティングを開催しなければいけないのだ。STONE FREEはその点如才ないというか、結構こまめに連絡を入れてくれたりする。それはこちらから投げかけていくべきことかもしれないのだが、どうしても後手後手に回る状態で、彼らのようにちょっとしたことでも連絡を入れ、会社まで来てくれるということを繰り返してくれているのはとても有難いことだし、嬉しいことだ。そういうことをすべきだということを、彼らは1枚目のアルバムの際に知ったのではないだろうかなんて思ったりするのだ。
 
 
 
 今日から、毎回とは言わないものの、気になった映像をYouTubeでリンクしていきたいと思ったりしている。このブログを読んでくれている人たちへのプレゼントになれば幸いだし、その映像に対してでもいいから、コメントとかトラックバックをもらえればもっと幸いです。
 
STONE FREEのPV〜僕が撮影して編集もしました。



FLYING KIDハマサキの『幸せであるように』〜フライングキッズも解散し、1人でいろいろ頑張っている浜崎もいいオッサンになってきて、他のことをするとかでもなく歌一筋の人生から抜け出せない感じの、枯れた感じが僕は好きです。