Friday, November 21, 2008

クロスオーバー

 地下鉄の駅で配布されているメトロミニッツというフリーペーパーがある。今朝の高田馬場駅ではほとんど配布終了だったらしく、いつもの箱にはちょっとだけ曲がっていたのが1部だけあった。誰かの読みかけをもらうか? と思ったが、見たかったのでゲット。

 今回の特集は「最後の晩餐にもイブがある」というもので、要するに人生最後の食事、その前の回の食事は何を食べたいかということだった。トップバッターで取り上げられていたのはドリフの高木ブーさん。ブーさんが食べたいのは「クロスオーバーのコーヒーゼリー」。ふーんと思ってページをめくろうとして、んんん、これはあの店かと思った。僕の家からキラキラレコードに歩いていく途中にある喫茶店がこのクロスオーバー。3年くらい前にオープンしたお店で、僕は2回くらいしか行ったことがない。すぐ隣にあるカフェの方がよく行くくらいで、そんなところが紹介されているのでちょっと意外。

 ブーさんも実は近所にお住まいで、キラキラレコード周辺では時々見かけることもある。卓球の愛ちゃんはまだ見たことがないが、エジプトに詳しい吉村教授とか、北朝鮮に詳しい重村教授とかだって時折見かける。ハンカチ王子も見たことあるし、結構有名人ストリートだといっていいんじゃないか? まあ本音を言えば、キラキラレコードのアーチストが有名になって、このストリートの有名人発見頻度を高めてほしいものだと思う。


 今日もあるバンドがやって来て、ミーティング。彼らの活動内容に僕は満足していない。当然その売り上げとか、人気の上昇度合いにも満足は出来ない。もっともっと売れていいはずのバンドだし、人気が出ないはずはないと本気で思う。だが、結果として売れていないのは、まず、彼らに覚悟が出来ていないということ、だから戦略が甘いということ、その甘い考えだから僕のいう言葉も心に響いていないということ。理由はそこに尽きるのだ。じゃあそういうことを早くから言ってあげろよという声もあるだろう。だが、そういうことはなかなか言えないのだ。言えないというのはこちらの躊躇ではなく、彼らに受け入れる準備があるのかという問題。誰しも自分の意見が正しいという思いとか自負があり、それが強いと他人の意見は聞き入れられなくなる。それにも意味や理由はあるのだが、そういう理由がもっともらしい正当性に守られているように彼らは理論武装している。だが、ある行為、例えば宣伝活動なんかを「やる」「やらない」の理由が正論であるかのような説明がされるとき、僕はあることを疑うのだ。

 それは、本当は「やりたくない、面倒だから」というのが真の理由ではないかということ。

 そのことをどのタイミングで言うのか。早すぎると、僕の意見は単なる押しつけになる。押しつけは反発されるだけだ。僕は彼らの保護者でもなければ恋人でもない。押しつける正当な理由があるのかと言われれば、それはビジネスだからという、実にこれ以上ない正当な理由があるのだけれど、ビジネスを理由にした押しつけは、さらに強い反発を生んでしまうことも知っているのだ。

 だから、彼らが僕の意見をちゃんと聞けるような下地が出来るのを待ってみる、そういう時期も必要なのだと思いながら日々の仕事をしているのである。で、彼らの場合、今日がまさにその時だったのではないだろうか。それで冒頭から僕が一方的に喋りまくった。もっとも彼らは口べたなので普通のときだって僕ばかり喋ってしまうのだけれど。時間にして約3時間。彼らもいろいろと感じたりしたのではないだろうか。とりあえず今日のところはなんの結論も出さず、一度バンド内で話をしてみて、後日彼らがどうしたいのかを連絡してくることになった。どういう結論になったとしてもおかしくない。さらに続いて活動し、今よりも上の展開を目指して頑張る決意と覚悟をしてくれるのであれば、こちらも今以上に頑張って彼らをフォローしたいと思う。そうではなく、苦労するのもなんだからということでキラキラレコード以外で活動したいという結論だってあるだろうし、だとすれば関係もこれまでということに成らざるを得ない。そうなったとしても、これも運命であり、結果でしかないのである。

 彼らの音楽は、実はここ数年の中でもっとも売れる可能性を持った音楽だと思っている。彼らをなだめすかして次のリリースをさせることだって出来ないことではない。でもそれでは彼らの成長はないし、成長無くして、もしも機会を与えることが出来たとしても、そこで彼らは失敗するだろう。だから僕は厳しいことも言わざるを得ない。厳しいことを言って憎まれたとしても仕方がないし、逆に伝わって成長してくれれば、リスクを超えられた喜びにもつながるような気がする。そうなってくれることを願うし、それはビジネスでの成功、つまり売れるということによる利益なんかよりもよほど嬉しい、仕事の手応えだと思うのだ。