Monday, December 08, 2008

Macintosh2ci



 初めて買ったマックは、タイトルの2ciだ。メモリ5メガ、ハードディスク80メガというスペックで、今から見ると自転車どころか青虫のような性能しかないが、それでも当時の一般的なパソコンだったNEC9801シリーズから較べると、それはもう種類が違うというくらいの、例えて言うなら普通の携帯電話とiPhoneの間にある違いの100倍くらいの「違い」を持った機械だった。
 
 まだビクターに勤めていた僕は、これで出来ることに「未来」を感じ、会社を辞めて独立するきっかけにしたのだった。ソフトと合わせて150万円ほどしたが、そのローンの重みに耐えながらも、会社を立ち上げてキラキラレコードをスタートさせたものだった。
 
 その初代僕マックの2ciが先日友人宅から帰還した。この2ciを数年使った後、僕は後継機種をそれなりに買い足していく。だけど捨てるわけにもいかず、マックに興味を持っていた友人に貸していたのだった。その友人も今やiMacを使っていて、実家に置いていたこの2ciを僕のところに戻すことにしたのだった。こちらとしても今やノート型しか使っていないという状況。しかも現行の液晶ディスプレイには接続できないし、接続したところで機能的には使用に耐えられるスペックではない。でも心情的にも捨てるわけにはいかないんだな、これが。
 
 僕のところにはパソコンを持っていないバンドマンなんかが沢山来ては、「やっぱ買った方がいいんですかね?」とか質問してくる。そういう人には「本当に要るって思わないんだったら買う必要はないと思うけど」と言う。だがその言葉の裏には「オレは150万かけてもこれは必要だって思ったんだけどな」という思いが常にある。パソコンで出来ることなんてたかがしれている。だがそのたかがしれていることで自分の選択肢が飛躍的に広がることもときにはある。その必要性を感じない人にはただの箱である。ただの箱に5万円だって払う理由はない。だが、それに150万払っても惜しくないという価値だって、人によってはある場合があるのである。
 
 また、別のバンドマンは「やっぱり上位機種を買った方がイイですかね?」とか聞いてきたりすることもある。その時にはこう聞くことにしている。「で、何をしたいの?」と。そうして返ってくる答えはたいてい「メールとか、ネットとか、ワープロとかですね」程度だ。だったら、秋葉原の裏通りで外人さんがやっている露店に売っている数年前のノートパソコン1万円保証無しっていうのでいいんじゃないだろうかと真剣に思うのだ。だって僕の2ciはその保証無し露店パソコンの100分の1程度の機能しかない、今やジャンクですらない機械であって、それでも結構いろいろなことができたのだから。