Monday, February 21, 2011

密着の日々

 しばらくブログをサボっていると、その間にあれも書けなかったこれも書けなかったという思いがあって、それで次に全部書こうとか考えているうちに書けなくなってしまうんだな。だからばっさり過去を捨てて、今書きたいことを書くようにします。毎日Twitterでつぶやいているので、知りたい人がもしもいたら、過去はそちらで。書きたいことがあるのだろうか。ただ書くという行為を粛々と進めたいだけなんじゃないだろうか。そんな疑念も確実にありつつ、まあ書いてみますよ。

 先月末から先々週末まで、僕は友人からの依頼を受けてキラキラレコードの仕事とは別の仕事に取り組んでいた。ニックカーターという人に密着してビデオを撮影するという、カメラマンとしての仕事だ。ニックカーターというのは、バックストリートボーイズのメンバーで、友人はその日本でのファンクラブを運営している。今回ソロアルバムがリリースされるということでプロモーション来日をすることになったのだが、その来日の様子を撮影して今後の何かにニック自身が使用したいということで、そのカメラマンを急遽探さなきゃいけなくなり、僕にお願い出来ないかということになったのである。



 それで先月末、僕はいきなり成田空港に連れて行かれ、空港出口から出てくるニック一行を撮影する。そして車まで移動するところもずっと撮影し、バンのところに着いたらマネージャーが手招きをして、そのままバンに乗り込むことに。ホテルまでの移動もずっと撮影するという、まさに密着撮影となった。

 以来ラジオ出演といえば局に行き、槇原敬之とのトークをずっと撮影したり、ホテルでの取材でも、控え室でルームサービスの食事をしているところを撮影したり、ライブの際には楽屋からずっとつきまとい、リハーサルからイベント本番、会場をあとにしてホテルに移動するまでもずっとほぼベタ付きの感じで撮影をすることになった。こんなにずっと撮影されて、気が休まることはないんじゃないだろうか、スターは大変だなと思ったりもしたが、本人はいたって平気な素振りで、楽屋ではちゃんとリラックスしていたし、その辺はプロだなと思った。そもそも撮影自体も自分で言い出したんだろうし、それで頼まれて撮影している僕が心配することではないのかもしれない。

 密着の中で、ある雑誌の写真撮影のために明治神宮に行った。駐車場まで車で行って、そこからスタッフたちと一緒に撮影をしながら本殿の方に歩いて行くわけだが、お忍びでの行動じゃなくて撮影用だから非常に目立つ。平日の日中なので参拝客も少ないとはいえ、途中何人もの女性に見つかり、握手や写真を要求されるのだが、実に気軽に応じていた姿がとても印象的だった。中には気付かずに先を行くお母さんにシャッターを押してもらおうとした娘が「おかあさーん、ちょっとちょっと、今とても奇跡的なことが起こってるんだから、早く早く」と大声で呼んでいて、ああ、そうだな、この人は世界的なスターなのであって、過去のCDセールス累計でいえばマイケルジャクソンに次ぐ枚数(らしい。確認したわけではありません)というビッグネームなのであって、その人と遭遇したら奇跡的なことかもしれないという気がその時初めてした。もしもマイケルジャクソンと明治神宮で偶然遭遇したら、僕もきっとビックリ仰天するはずだし、慌てて写真とろうとしただろう。毎日のように密着していて感覚は完全に麻痺していたが、実際はそういうことだったのかもしれない。

 それだけ密着していたにもかかわらず、その間ずっとビデオカメラを回しているわけで、僕は喋ることが出来ない。だから当然ニックと会話をすることも出来ず、仲良くなれずに残念だった。滞在最終日にイベントがあり、イベント終了後の楽屋で彼がスタッフ全員に握手して回ってて、僕とも握手をする時に「Do you need more video shooting?」と聞いてみたら、「No, enough. Good job!」と答えた。ああ、それなりに僕の仕事も意識はしてくれていたんだなと思って、なんか嬉しかった。友人がファンクラブの仕事をしている限り、また会うこともあるかもしれない。その時に僕のことを覚えてなどいないかもしれないが、まあそれもいいだろう。なんか不思議な感覚を覚えた約2週間だった。

 はっきり思ったのは、どこかの誰かが売り出したスターの仕事をするよりも、自分のところで売り出したスターの仕事をしたいなということだ。キラキラレコードの仕事に完全に戻り、その仕事を遂行していきたいとあらためて決意したのだった。

(密着して撮影したので当然のようにたくさん写真はあるけれど、それは僕のものではないのでここで公開などは出来ません。もしもBSBのファンがいらっしゃったなら、BSBのファンクラブの方でご覧ください。)