Tuesday, November 16, 2010

20周年ベスト解説〜「あの頃、オレンジの靴」有刺鉄線


(上記バナーをクリックすると本日の曲をお聴きいただけます)



20周年を記念した3枚組ベストアルバムをリリースすることになった。毎日、1曲ずつ紹介しています。1日限定で楽曲をアップしていきますので、よろしければお聴き下さい。(曲は毎日変わります。次の解説ブログがアップすると、このページの楽曲も新しいものに変わってしまいますのでご了承下さい。)

19. 「あの頃、オレンジの靴」有刺鉄線(2010年「放課後のシンパシー」KRCL-143)
 現在のキラキラレコードでもっとも勢いがあるバンド有刺鉄線の1曲。彼らとは2007年に出会って、アルバムをリリースし、ワンマンライブも成功させて未来は明るかったのだが、2008年にメンバーの方向性の違いにより解散に。いつも元気で前向きのギタリスト山崎がそのことを報告しにきた時、まるで不治の病を宣告されたかのような沈痛な面持ちだった。その時点では「田舎に帰るか、またメンバーを探すかは判らない」という気持ちだったようだ。
しかし、情熱を失わなかったギターの彼は「同じ気持ちでバンドに打込める熱いヤツとやりたい」の一点にこだわってメンバーを探し、旧知の仲で同じように熱いメンバーに恵まれてなかったベースの武蔵と、モロッコ人ボーカルのユーセフが参加することになった。少年時代にブルハに惚れて日本に来ることを夢みていたユーセフは、どんな日本人にも負けないようなサムライ魂の持ち主で、熱い歌を叫ばせるととても絵になる男だ。
 そんな3人も「半年後に初ライブをやれれば」というノリで新たな有刺鉄線の活動を考えていたのだが、そんなところに突如NTTDocomoのCMをやらないかという話が舞い込んだ。無名のバンドがオリジナルアレンジでビートルズの「All you need is love」を歌うという一連のCMだった。しかし先方のディレクターは以前の有刺鉄線を念頭においていたわけで、「ボーカルが変わっているのならそのデモはないか」と言ってきた。当然デモなどはなく、急な話に対応することも出来ず、このチャンスは流れてしまった。その時に「いつくるか判らないチャンスに対応出来ないようではダメだ。常に臨戦態勢を整えておかないと後悔する」ということを思い知らされ、そこから急遽レコーディングを開始し、2009年1月のマキシシングルをリリースするという流れになった。このマキシシングルのビデオも、時間がない中急遽作ろうと、深夜のレコーディングが終了したスタジオの脇で、小さなビデオカメラを回して制作したのだった。チープだが、現在の有刺鉄線が快進撃を始める、そのスタートだったような気がする。


 その後は次々とライブを成功させ、2010年のアルバムリリース時にはRockinon Japanでのインタビューも実現、来週11月27日には渋谷屋根裏で彼ら企画のものすごいライブが開催される。今まさに見ておくべきバンドの勇士を是非とも多くの人に見ておいてもらいたいと思う。


 この曲は以前のメンバーでリリースしたアルバムにも入っていた名曲で、それをユーセフのボーカルで録り直したもの。オリジナルを超えたパワーを持ったなと、今は思う。