Tuesday, February 22, 2011

古い機械

 とはいえ、それは誰もが憧れたのだ。わずか13年前の話である。



 僕はここ数日古いiMacG3を引っ張り出し、使えるように作業していたのだった。目的は、Ustreamの送信用。会社のミーティングスペースから入り口辺りを外から見られるようにしたかったのだが、そのために現役で使っている機械を割り当てるわけにはいかないし、かといって新しい機械を買うのも嫌だった。使われなくなって転がっている機械を何とか利用出来ないものか。それで、始めたのだった。

 まず最初にネジを外して中をいじることから。そもそも使わなくなった理由は、DVDドライブがいかれたことだった。スロットローディング方式だったのだが、中に入れたディスクを取り出すことが出来なくなっていた。UstをするためにはOSをアップグレードする必要があるが、ディスクが入れ替えられなければインストールは無理である。だからそれをなんとかしなければということなのだ。

 底面のカバーを外し、金属の網のようなものを外すとマザーボードが見える。その中央にあるのがメモリスロットで、全面にHDDとディスクドライブが取り付けられている。SCSIからその2つを外し、電源も外し、ドライブを金属の金具から外す。トレイ式のドライブだと細い針金で押す穴があって、押せばトレイが開くのだけれど、スロットローディング式のこのドライブにはそんな穴は見当たらない。仕方なくネジで外箱を開け、少々無理矢理ドライブを外し、中央で磁石の力でディスクを挟んでいる部品をずらさないようにしながらディスクを取り外した。再びネジで箱を閉じ、HDDと供にマザーボードに固定し、電源を戻す。網状のカバーを取り付け、底面のカバーを取り付け、なんとかもとに戻った。

 その状態でOSX10.2のディスクを入れ、インストール開始。約1時間経ったところでうんともすんとも言わなくなり、強制終了&再起動。HDDを初期化して再度インストール。今度は1時間ほどでOSX10.2のインストールが完了した。その状態でIEを立ち上げてみるが、Ustなどまるで出来ず。Safaliも見当たらず、Firefoxはインストール出来ず。やはりOSX10.4が最低必要ということが判る。それで10.4のインストールディスクを持ち出し、インストール。すると、「ファームウェアを更新しないと10.4はインストール出来ませんという表示が出る。それでAppleのサイトに行ってiMacG3のファームウェアを調べると、OS9.1が入っていないとファームウェアの更新は出来ないらしく、仕方なくOS9もインストールすることに。OS9は9.22というディスクしかなく、9.1じゃなくていいのだろうかと思いながら、インストール。この時、ディスク取り出しの指示をしたら、ドライブは唸りをあげながら作動するのだが、出てこない。最初の問題に逆戻りだ。そのため、まずはスロット周辺に付いているかわいい色の出口周り部品を取り外す。そしてディスク取り出しをすると、かろうじてディスクのフチが3mmくらいのぞかせるが、完全に出ることなく3秒後に中に入っていってしまう。なので再度ディスク取り出しをして、3mmほど出てきたところでセロテープを付け、無理矢理引っ張り出す。荒療治ではあるが、それなりにうまくいくものだと我ながら関心した。
 
 そしてOS9.22をインストールするのに約45分。指示に従ってファームウェアをアップグレードするわけだが、側面のリセットボタンの横にあるプログラマボタンというやつ(初めて見た)を押しながら起動するべしと書いてあって、その通りにしても説明とはまったく違うターミナルモードのような画面が出てきて、再ブートさせたらまた普通にOS9が立ち上がる、その繰り返しを5回ほど。一体何が間違っているんだろうと思ってよく説明を読むと、プログラマボタンは電子音が鳴った直後に押すのを止めないといけないようだった。僕はずっと押していたのだった。

 電子音の後に押すのを止めたら、無事にファームウェアが更新された。そしてOSX10.4をインストールして、ようやくMacの問題は解決した。と思われた。だがFirefoxでUstreamを立ち上げ、放送を開始しようとすると、放送用の画面が何も表示しない。なるほど、UstreamはFlashを使ったページなので、Flash Playerを入れないといけないのだな。そう思ってFlash最新版を入れようとすると、アラート画面が。どうやら最新のFlash10.2はG3プロセッサへの対応を終了したとのこと。なんだよ、最後の最後でダメなのかとかなりガッカリした。

 しかし、諦めるにはまだ早い。いろいろとググってみたら、古いバージョンもアーカイブとして残っているようだった。なのでG3をサポートしている中での最新版10.1をダウンロードしてみると、うまくいった。古いiMacG3が、Ust中継用のマシンとして活躍し始めた。嬉しい。とても嬉しい。既に現行機のスペックと較べるとおもちゃ以下のマシンでしかないのかもしれない。だが、2000年頃にはこの機械が欲しくて欲しくてたまらなかったし、まさに最先端の機械だったのだ。時代が変わったからといってその想いが薄れたわけではない。だから、使わなくなっても捨てられなかったのだ。その機械が動くようになった。用途が出来て働いているのが、なんとも嬉しい。まだまだやれるよ、お前と、僕は言いたい。

 今はまだ会社にいるので、すでに中継を始めた映像を見る意味などないけれど、帰宅してから中継をのぞこう。電気を落とした会社の姿はきっと薄暗がりなだけだろう。でも、そんな暗がりの中でiMacが頑張って働いているぞ。そう思うだけで、僕はまた嬉しくなるんじゃないかと思う。

 あ、この中継にはパスワードがかかっていますので、僕以外の人は見ることができません。とても個人的な中継ですので、ご了承ください。