Thursday, March 03, 2011

罰則

 京都大学の入試でYahoo知恵袋を使ったカンニングをした予備校生が逮捕された。このニュースはセンセーショナルに報道され、その結果今回の逮捕に至ったわけだが、僕はこの件にかなりの違和感を覚えた。

 まずハッキリさせておきたいのだが、カンニングは悪いことである。厳しく罰せられる必要がある。カンニングされた大学側はその生徒を出入り禁止にすべきだと思う。今回合格点を取っていたならその合格は取り消しだし、合格点に達してなかったとしても向こう数年は受験さえ出来ないという処置はあって然るべきだ。大学側の怒りがMAXなのであれば未来永劫受験禁止でもいいだろう。その裁量は大学側にある。そしてこれは単に京都大学ということでなく、国公立大学全体に広げたとしてもいい。そのくらい、カンニングは大学の運営に対して悪い行為だといって間違いない。

 だが、逮捕というのは行き過ぎだ。人間としてその後の人生に大きな影響を与える。そこまでの悪事か?過去にもカンニングはたくさん行なわれて、見つかった者も見つからなかった者もいたはずだ。見つかった場合、逮捕されたか?そんな事案が一度でもあったか?かつて大問題になった早稲田大学商学部での裏口入学事件では、合格した学生を不合格にし、前年までの試験で入学していた在校生と卒業生に対して入学取り消しおよび学籍抹消の処分をした。せっかく4年かけて卒業しても、卒業扱いにならなくなって本人はショックだっただろうが、それでも逮捕はされていない。だが、今回はカンニングをしたことで逮捕になっている。著しい不公平があると思われる。

 今回はネットを使った大胆なカンニングだったということが関心を呼んで、メディアで大々的に報じられたため、警察も動かざるを得なくなったというのが実際のところだろう。これについて堀江貴文氏がTwitterで「被害届が出ても警察はそのほとんどを放置する。財布が盗難されてカードがドンキホーテで使われて、そのビデオまで出したのに動いてくれなかった」と言っていた。なるほどと思った。僕も以前、駐車中の車のドアミラーが壊されていて、110番したらお巡りさんが4人で自転車に乗ってやってきて、一目見ただけで「ああ、これは見つからないね」と言い放った。捜査する気などまったくない様子だった。そのうえ4人のうちの1人が「キミねえ、ここ、駐車違反でしょ」と言い出した。その場所は私道で、アパートの大家さんから停めていいと言われていた場所だったのでそれを説明して事無きを得たのだが、事件は当て逃げだったのだ。しかも細い袋小路で、奥の家の車庫にはたった1台の車があるだけ。それをちょっと調べれば、その車が当て逃げしたかどうかは判る。その車が違っていれば見つけることは難しくなるだろうけれど、それさえしていない。それで「見つからないね」である。僕の警察への疑問視はその時に始まったのだった。

 話を戻そう。警察が個人情報の開示を要請して、他府県の警察に動いてもらうというのはよほどのことのはずだ。それをしてでもつかまえる対象がカンニング学生。公平性もなければ、教育的配慮もない。未成年の犯罪の場合、更生の可能性に配慮して犯人の特定につながらないようにする。が、メディアで話題になれば容赦ない捜査だ。そこに人間としての躊躇なんてなかったのだろうか?なかったんだろうな。それはなにも警察だけが問われている人間性や躊躇ではなく、1面で報じた大新聞や朝からトップニュースで騒いだワイドショーにも欠けている人間性や躊躇なのだ。狂っている。

 繰り返すが、僕はカンニングはかなり悪いことだと思うし、その学生は厳しく罰せられなければいけないと思う。だが、やはりどう考えても逮捕は行き過ぎだ。それを行き過ぎだと思わない人がものすごく多いんだなということが判って、僕は悲しくなった。怖くなった。