Thursday, May 23, 2013

お父さん怪獣

 ほとんど毎日、夜8時半から9時くらいになると我が家には怪獣が現れる。お父さん怪獣だ。

 生後11ヶ月の息子を奥さん(お母さん)が寝かせ付けるのだが、疲れていない日にはなかなか寝ない。暗くした部屋ではいはいして動き回り、壁などにつかまり立ちをする。そして壁を叩き始める。夜のマンションで壁を叩くのはさすがにまずい。先日となりの家の人と廊下で会った時、いつもうるさくてすみませんと謝ったところ「いやいや、泣くのは赤ちゃんの仕事ですからね」と笑って答えてくれた。そんな優しい隣人に恵まれているとは思うが、壁を叩くのはまずい。泣き声を口を塞いで止めることは出来ないが、壁を叩くのは止めさせられる。壁から離せば済むことだ。

 それで、お母さんが息子を壁から引きはがす。でもお母さんのことを舐めているのか、優しいからか、笑顔でハッスルを続ける。そこで、お父さん怪獣が登場だ。別にハッスルにハッスルで返すのではない。暴れて対決するのでもない。ただ、息子の動きを封じるだけ。僕が横になって、息子とお母さん(奥さん)の間に壁を作る。息子は僕を乗り越えようとするけれども僕が両手を使って巧みにそれを封じる。思うようにならなくて息子泣く。結構激しく泣く。でも乗り越えさせず、息子は泣き疲れて徐々に眠くなる。最近ではそのパターンになったらもう逃げられないと判っているのか、すぐに泣く。ひとしきり泣いたところでお母さん(奥さん)が両手で抱え上げて息子の布団の上に寝かせ付ける。一丁上がりだ。

 要するに毎晩のように動きを封じられ、泣かされるお父さん怪獣なのに、朝起きたら笑いながら僕の方にやってくる。仕事から帰宅すると気配で判るらしく、満面の笑顔で迎えてくれる。子供というのは本当にありがたい。自分が必要とされているということを確実に実感させてくれる。しかもだ、お母さん(奥さん)と一緒に暗い部屋で寝かされそうになっている時にさえ、息子はお父さんを呼びにやってくる。寝室と居間を遮っているふすまをドンドンと叩き始める。その結果お父さん怪獣がやってきて、いつものように動きを封じられて泣かされるということを知っている(多分)にもかかわらずだ。

 そんな息子を泣かすのは非常に心苦しい。でも、寝かせなければならないのだ。なんでも寝ている時に脳は発達するらしく、それも深夜になってからではなく夜の早い時間帯の睡眠に意味があるそうだ。別に脳の発達を最優先したいということでもないし、その説を信じきっているわけでもないけれど、積極的に逆らう意味もやはり無い。それに早く寝かせることで大人の時間も確保出来る。こうしてブログを書くことも出来るのだから、そりゃあ早く寝かせるに越したことはない。

 そういうわけで、お父さん怪獣は今日も息子との戦いに明け暮れる。現時点では連戦連勝負け無し。いつか負ける日が来るのだろうな。その時が楽しみのようであり、恐いようでもあり。育児は面白い。