Tuesday, December 09, 2008

届かぬ言葉

 バンドからの電話。バンドとして自分たちの方針で2009年チャレンジしていきたいので、キラキラレコードでのリリースは見送る方針でということだった。彼らとは先日ミーティングをして、今年の活動状況とそれに伴う結果についての考察と、それでは来年どうしていくのがいいのかということについて話をしていたばかりだった。キラキラレコードの基本方針としては、最終的には方針はバンド自身が決めるというものであり、強制なんて出来るわけがないと思っている。ただ、バンドが100%自分たちの持っている情報だけでプランを決めていくと、要するに失敗する可能性が高いという認識は持っている。それはバンドがバカだとかいうのではないのだ。どうしても成功体験や失敗体験が少ないことと、自分に厳しいプランを立てにくいということがその理由である。これはバンドに限ったことではないだろう。スポーツにもコーチが必要だったりするように、バンドにもそういうものが必要であり、折に触れたミーティングで、そういうコーチングをしていくことがキラキラレコードの役割なのではないかと考えている。
 
 で、彼らは今年1年、リリースして以降彼らの思うままの方針で活動をしてきた。具体的なことを言うとバンド名も特定されるので控えるが、その活動は僕から言わせれば甘いし、間違っていた。しかしバンドはそれまでの活動内容からそれでいいと思っていたのだろう。だが、目標設定も曖昧で、当然のように求めるべき結果などついてこなかった。それを踏まえて、先日のミーティングだった。僕は言葉を選びながらも彼らの今年の行動を否定し、来年一緒にやるのなら当然いい結果を目指さなければいけないし、こちらとしてもそうでなければやる意味はない。だから彼らにリリース以外のところでも言うべきことは言い、高いハードルを設定し、それに向かって頑張っていけるなら頑張ろうと伝えた。その上で、彼らの中で一定の結論に達したのか、その直後に電話で「一緒にやらせてください」という意志表明をもらっていたのだった。
 
 だが、昨日夜に突然の電話で、「やっぱり白紙にさせてください」とのこと。もちろんこちらも正式に次の作業に向けた契約を交わしてはいなかったので、白紙にしろと言われればそうするしかない。最終判断は彼ら自身がすべきことなのだから。しかし、こちらとしても彼らに対する期待もあったものだから、何故そんな結論に至るのかということを問いただした。彼らの口からはそれなりの理由も聞くことが出来た。だが、やはりそこの根底にあったのは、こちらから提示した高いハードルというものが彼らには乗り越えられないということなのだろう。いや、ちゃんと向かいさえすれば乗り越えられないはずはない程度のものでしかないと僕は思うし、逆に言えば、それを乗り越えられないようではバンドとしての未来なんてないではないかということしか言っていないと思う。もちろんそれがゴールなどではなく、それを乗り越えたときに初めて次の目標を設定できるわけで、「バンドで成功する」ということを考えたときには避けては通れないことだったのだ。
 
 だが、それを乗り越えられるかどうかということをリアルに検討したときに、心理的なブレーキがかかったのではないだろうかと思ったりする。テレビなどでタレントさんがバンジージャンプや高飛び込みを強要されて、一歩踏み出すだけなのに何十分も踏み出せずにいる姿をよく見る。もちろんそれには演出的な恐怖感情もあるだろうが、本当に怖がっているケースもある。そういうのを見て、飛べる人からは「なんであんなに怖がるのかわからない」とか、あるいは「ここ飛ばないと、次から仕事もらえないよ」とかいう意見が出されるだろう。だが高所恐怖症の人からすればそこから飛ぶなんて信じられないことだし、それを強要されても、いろいろな理由をつけて、飛ばずに済むのなら飛ばずにいたいと思っても仕方がない。同じように、今回のバンド諸君にとっては、僕から提示されたプランというものが、ミーティングの席ではやれるかなという思いもあったものの、結果「やっぱり飛べない」という方向に気持ちが傾いたんだろうと思う。
 
 自分たちの納得するやり方で来年は勝負をかけたいんだという言葉を使った。しかしそれはもうこの1年で結論出たじゃないかと思う。しかももう10年近くそうして自分たちのやりたい方法でやって来たのだ。その結果が今の状況であるなら、どこかでやり方を変えるべきだしそのどこかは、今しかないということを伝えたかったのだ。だが、その言葉は届くことなく、今回のような結果に至ったということが、なにか虚しく、僕を哀しい気分にさせたのだった。
 
 もちろん、キラキラレコードにもダメな部分はまだまだ沢山ある。それはそれで彼らに不安を与えたのかもしれないとは思う。そこは否定するつもりはないし、今後の活動でもっともっと頑張っていきたいと思うのだ。それとは別に、彼らとは違うバンドマンたちが今も一緒に頑張ろうということで動いてくれている。そのことを幸せなことだと思い、彼らの成功でキラキラレコードの成功とし、今回のバンドにも「ああ、やはり一緒にやっていればよかった」と思われるくらいになっていきたいと心から思った。もちろんそれは結果であり、頑張る目的などでは有り得ないのだが。


今年一番好きになったアーチストともいえるPriscilla AhnのDream(PV)





これはオフィシャルビデオということだが、本人の歌をカメラ1台で追っている映像。