Friday, December 19, 2008

世界が静止する日



 早速観てくる。キアヌリーブスのある意味真骨頂な映画だと思う。というのは、キアヌリーブスってなんか真実味がないのだな。真実味がないというのは別にリアルではないとか、演技が下手だとかいうのではない。むしろその演技力を評価したいくらいだ。何故ならあんな役をこなせる俳優はそうはいないと思うから。これホント、心からの叫びです。
 
 つまり、彼のはまる役は、どれも人間のようで人間ではないというもの。最大の代表作マトリックスシリーズはもちろんそうだし、コンスタンティンの役どころもそうだった。そもそものスピードだってある意味人間離れした活躍を見せるわけで、あれは人間だけれども、人間じゃないよと誰かが言ったら素直にうなずいて信じてしまいそうになる。
 
 だからといって、心のない人非人などではなく、どれも心優しかったり、心を理解したくって一生懸命だったりする。シュワちゃんとかスタローンが見せる「どうだい、オレって優しいだろう」と言わんばかりの偽善的優しさとは違い、もしかしたら自分でそれ気付いてないんじゃないのと突っ込みたくなるような不器用さで生きている姿が、なんか憎めない感じの、キアヌ独自のキャラが、作品を超えて活きているように思うのである。
 
 こういうのって、シュワ、スタ、ウィリスといった野郎どもにはもちろん、どんな役もこなしてしまうジョニーデップにも難しいと思う。AIでジュードロウが演じたロボはそんな役どころで、なかなかのものだったなあと思うが、それもあの激しいメイクとCG処理を施してのものである。素顔でそれを演じきれるキアヌとはもう別次元だと言わざるを得ない。
 
 ここまで書いていると、なんかキアヌ大絶賛というように思われるかもしれないが、そうではない。キアヌにはそういう役がはまるというだけのことで、その役にはまるためにキアヌが何か努力をしているのかというときっとそうではないと思う。ただ自分らしさを素直に出せばそうなってしまうだけで、それを見抜いた監督やプロデューサーが、そういう役にキアヌを起用しているだけのことだろうと思う。いや、なんのリサーチも事実考証もしてませんけれどね。
 
 で、この映画。思った通りキアヌ、やってくれる。スーパー超人的な感じが凄くして面白い。映画自体はそんなに面白くなかったのだ。ストーリーの掘り下げは深くないし、地球の危機と家族の愛を重ねるなんて、宇宙戦争とかデイアフタートゥモローとかとほぼ同じで、人間のことを徹底してやっつけようという宇宙人や冷徹な自然が敵だったという点では、宇宙戦争やデイアフタートゥモローの方がハラハラするといってもいいだろう。ま、その「ハラハラする」といったその2作がどのくらいつまらなかったかということを考えても、この地球が静止する日の面白さ度が伝わるのではないかと思う。でも、そんなストーリーとかそういった点を考慮してなお、キアヌのキアヌぶりを観るというだけで、この映画は見る価値があると思う。なんか、ある種伝統芸能だなとか思う。キアヌには人間国宝の資格があるよ。「そんな評価を共有できるぞ、オレ」っていうイカしたセンスの人にだけ、この映画お薦めです。そうでない普通のハラハラを求める人にはもっと別の映画があると思います。多分。