Saturday, April 25, 2009

 罪とはなんだろうか。大きなニュースを見ながら、誰もが語ったりしながら、今更と思いながら、僕もちょっとだけ考えてみた。草なぎくんの話。

 彼が捕まった理由は公然わいせつだったのだが、よくある変態男が裸にコートで出会い頭の女の子に向けてコートを開いて「うわっ」という変態犯罪者のそれとは違い、酔っぱらっての失態であって、逮捕されるようなことかよとか、みんなも言っているし、僕もそう思う。鳩山総務大臣が逮捕直後に「最低の人間」なんて言ってしまって、おそらくファンからの圧倒的洪水のような抗議が来てしまって慌てて謝罪&訂正会見を開いたが、いみじくも大臣が草なぎくんのことを「絶対に許さない」と怒りをあらわにした以上の強さで、多くの人たちから「絶対に許さない」と思われたことだろう。本来は大臣が怒るほどの行動ではないし、謹慎・活動自粛する必要が本当にあるのかねと思う。

 だが、今回の逮捕が間違いだったかというと、そうとも言えないという気がする。通報を受けて駆けつけた警官はどう思っただろう。騒いで裸の男がいる。しかも超有名人だ。捕まえることなど簡単だし、捕まえたらいろいろ取り調べとか出来る。面白いな、捕まえちゃえ。

 それは違うと思う。確かに警察は「なぜそんなことを」と思うようなとんちんかんな嫌疑をかけてくることはある。3年ほど前車を止められ、持ち物検査ということでダッシュボードやトランクを開けさせられ、ポケットの中身まで調べられたことがある。どうやら麻薬を持っていないかランダム(と思いたい)に検査していたらしく、まあ当然だが何も出なくて解放されることになるのだが、その過程で友人が持っていた万能ナイフのキーホルダーを「銃刀法違反の恐れがある」とか言って脅された。あとで調べると銃刀法に触れるのは6.5cm以上の刃物らしく(記憶をたよりにしています。記述時の確認はしていません)、当然違法などではないのだが、そういうことを平気で言う。そうかと思うと18年ほど前には駐車していた車にぶつけられて、戻った時にはドアミラーが折れていた。110番通報したら自転車のおまわりさんが4人もやってきて「これは見つからないなあ〜」と言いながら全くやる気を見せず、がっかりしているところに「これ、こんなところに駐車していていいのか?」とか言い始めた。その場所は私道だった場所で駐車違反には当たらないのだが、それでも警官にそういわれるとこちらも怯む。やる気のない彼らの態度にはぶつけた犯人以上に怒りを覚えていたものの、ここで過剰な文句を言うと駐車禁止で切符を切られるかもという心配が先に立ち、捜査を強く求める声を挙げることも出来なかった。警察といっても完全ではないし、目の前に全裸のSMAPがいたら「取り調べをしてみたい」という気持ちが起こっても不思議はないが、今回の場合はそんなことではないと、勝手な想像ながら思ってしまったのだ。

 というのは、捕まえて何もなかったら大問題になることは想像に難くない。好奇心よりも前にビビリが先に立ったとしても不思議はない。出来ることなら関わりたくない。事なかれ主義は人間の根幹的な行動基準だ。だから本当は見過ごしたい。しかし今回は通報を受けている。夜中に騒いでいる人がいるという通報だ。だから何らかの対処をしなければいけない。目の前には全裸で騒いでいる男がいる。明らかに不審者だ。それが酔っぱらいなのか、それとも麻薬の幻覚症状なのか、見ただけでは判らなかったのだろう。警官に対して暴れたという。押さえるしかない。少なくとも通報された騒いでいる状況を現認している以上、それは取り除かなければいけない。逮捕か、保護か。暴れている以上逮捕するしかないと思ったのだろう。それに芸能人の麻薬汚染が騒がれている昨今、この以上行動を見たら疑っても不思議はなく、その方面の検査もしなければいけないけれども、この初動で保護にしてしまったら、尿検査とかすることも難しくなる。逮捕しておけば取り調べの過程で尿検査することにも正当性が出てくる。逮捕時に手錠をかけていないことを考えると、本当に現行犯として公園で逮捕を執行したのかどうかは判らないと思う。警察署に連れて行って、そういう検査をするためには逮捕という形にしなければというあとからの判断だったとしても不思議はないと思う。いずれにしても、異常行動が原因で、疑われる行動理由に対して調べるために逮捕という形に至ったのではないかと思う。

 そこで、今回の逮捕理由なのだが、公然わいせつだ。パトカーに乗せる際に暴れて抵抗していたらしいので、公務執行妨害での逮捕だったり、暴行容疑での逮捕だったりしてもおかしくないとも言えるのだ。もしもそうだとしたら、これは意味がまったく違ってくる。世論も違ってきただろうと思う。酔っぱらい男ではなく、暴力男ということになってしまう。世論も厳しさを増すし、そもそも警察は公務執行妨害とか同僚への暴力に対してはもう対応が違ってくる。徹底的にやってくる。今回35時間で釈放されたが、警官への暴力ということになれば、取り調べのための拘置期限ギリギリまで拘置することだってあったかもしれない。鳩山大臣は選挙を前に世論の反発を恐れて慌てて発言撤回して謝罪したが、警察は世論なんて気にしない。むしろ世論を味方にするための情報リークもしただろう。そんなことになっていたら、草なぎくんのイメージダウンは計り知れなかっただろう。そんなことを考えるにつけ、今回の罪名が公然わいせつで良かったと思う。パンツだけでも履いていれば良かったのにねという意見もちらほら聞かれるが、僕はパンツまで脱いでいたから良かったんじゃないかなと思うのである。それだから、警察にも逮捕する大義名分が出来たし、今回の逮捕に対して「仕方ないよね」とは言えても、「警察は不当だ」という声にはならない。だって、脱いでいたんだから、公園で。SMAPでなくても捕まる内容だ。騒いでいる男を捕まえる理由としては別件のような印象も無いわけではないが、この別件理由があったからこそ、警察も草なぎくんもダメージが最小限で収まったと僕は思うのだ。