Friday, July 03, 2009

全国民に捧げる読売巨人軍展



 今発売中のBRUTUSの特集はジャイアンツだ。

 昔は毎号BRUTUSを買っていたが、最近はもう年に2〜3号しか買わない。面白くないからだ。コンビニで新しいのを見てもパラパラと見て、棚に戻す。その繰り返しだ。ところが今号の表紙に麗しのYGマーク。どんなブランド品のマークよりも強力な吸引力だ。それでも、買わなかった。その日、7月1日はなんか急いでいたのだ。




 それで今日、所用で新宿に朝から向かう。買い物を済ませてから、会社に電車とバスと徒歩のどれで戻ろうかと迷ったあげく、歩いて戻ることにした。用事があったのは三越で、地下街を通って伊勢丹に入り、エスカレーターで1階に上がってから外に出ようとしたら、その催しはあったのだ。『全国民に捧げる読売巨人軍』展。それはそれはちょっとしたブースで、いつもは1階向けのアクセサリーとかの特設をやったりしているところだ。そこになぜかジャイアンツ。原監督の笑顔のアップや、ジャイアンツの選手スタッフの集合写真、昔の後楽園球場のパノラマ写真などが貼られ、その間に怪しげなユニフォームが展示されている。ジャイアンツファンのデザイナーが考えたおしゃれユニフォームということらしい。BRUTUSと伊勢丹のコラボでの展示らしく、なんか面白かった。ああ、これは最新号のBRUTUSを買えということなんだなと、諦めのような、わくわくのような、そんな気持ちでその場に売っていたBRUTUSを購入。BRUTUSをデパートで買うという体験はこれが最初で最後だろうなと思った。もちろん伊勢丹の紙袋に入れてもらうことは固辞したけれども。

 読んでみた。まあ近年のBRUTUSらしく、内容は少々薄い。だが、面白い。渡辺恒雄、ナベツネのインタビューが面白い。江川の空白の一日事件で犠牲となった小林繁がもう野球を辞めてタレントになるなどと言い、それを説得に行ったあたりのくだりが面白い。それをきっかけにジャイアンツに携わるようになったというナベツネはなんとジャイアンツのエース小林繁の顔を知らなかったという。それで臨席していた代理人に向かって説教を続けたというのだ。ナベツネらしいといえばらしい話だ。

 この特集をザッと見るだけでも、いまでもジャイアンツはONのチームであるということがよくわかる。それはジャイアンツ人気が絶頂の時代でもあり、V9という最強時代でもあり、そんな中の主軸の2人がいつまでもジャイアンツ伝説の中心であるというのは当たり前といえば当たり前なのだが、しかしそれを超える選手がついぞ出てこないというのが寂しいばかりだ。怪我をして明日をも知れぬ上原浩治、ヤンキースでのレギュラーさえ確定出来ぬ松井秀喜、やはり怪我に苦しみ出場さえ遠くなってしまった高橋由伸。彼らがジャイアンツの伝説に成れないのは、怪我のためなのか、それとも大リーグ挑戦という甘い罠のためなのか。そういうことを考えるにつけ、清原がドラフトでジャイアンツに指名されていて、生え抜きとして生涯ジャイアンツであったならばと思わずにはいられない。

 BRUTUSの特集で、唯一スポットを当てられていた現役選手が坂本勇人だ。やはり坂本がこれからのジャイアンツを支えるスター候補の最右翼といっていいだろう。そんな彼はどのような道を歩むのだろうか。やはり大成したらメジャーとか言い始めるのだろうか。それも人生かもしれない。そして有力な選手が世界に目を向けたくなるというのも避けられない時代ということだろう。だが、だからこそそれとは違う伝説への道というものもあって良いような気がするし、そういう選手が坂本に限らず、今後出てきてもらいたいものだと思う。




 写真を撮った伊勢丹での原監督写真の下にあるのは、ホームランを打った後の選手を原監督が迎える時の「グータッチ」を再現する腕の人形だ。これにグータッチをすると原監督が「○○○○!」と言ってくれる。ジャイアンツファンは、ぜひ現場に行ってグータッチして欲しい。アクセサリー売り場のど真ん中で原監督の声が響くというのはとても愉快だ。もちろん場違いな雰囲気に怖じ気づいたりもするのだけれども。