Thursday, November 11, 2010

11年前の曲

 現在、キラキラレコード20周年記念ベストの最終作業をしている。その中でDVD-Rのオーサリング&動作チェックをやるわけだが、その過程で収録されている曲などを何度も聴くことに。その中の1曲を繰り返し聴くうちに、なんか懐かしいというかやるせないというか、とても不思議で複雑な気持ちになったのだ。

 その1曲というのは、オーケストラバレエというバンドの「太陽でさえも灼けるような恋をしよう」という曲。彼らはボーカルとキーボードとその友人のギタリストという3人構成のバンドだった。曲名からも伝わるかもしれないが、彼らはとても情熱的なポップスを奏でていた。当時のキャッチコピーは「平成の西城秀樹」。暑苦しいと思う人もいただろうが、僕はその情熱溢れるパフォーマンスとテンションが妙に好きだった。キラキラレコードからは1枚のアルバムをリリースしたのだが、この曲はその中でも特に前向きで明るく力強い1曲だ。

 ボーカル&リーダーはとても礼儀正しくて、そしてものすごく意欲に溢れていて、僕も何度か自由が丘のレコーディングスタジオに顔を出したりしたし、完成してからはPVを撮影したり、企画ライブに出てもらったりした。彼らの家が僕のアパートとも近かったということもあって、特に親しくさせてもらったりしていた。

 リリースから7年たった2006年の9月、彼らから電話が掛かってきた。ギターの子だった。「○○○さんが亡くなりました。通夜がありますので是非参列していただけませんか。」○○○さんはキーボードの女性である。ビックリした。僕よりも年下なのだ。そして彼女とボーカルは、夫婦である。単にメンバーが亡くなったというのとは訳が違う。奥さんを若くして失ったのだ。悲しみはいかばかりだろうか。通夜の会場は彼らの実家でもある茨城県水戸だったが、常磐線に乗って、僕は通夜に参列した。駅から20分くらい歩いたところにある斎場の末席に座り、うなだれるボーカルを遠くから眺めていた。喪主でもある彼とは最後に軽く会釈をするくらいしか出来なかった。ギタリストは丁寧に挨拶をして僕を見送ってくれた。

 それ以来、彼らとは会っていない。だが今回こうして音源を特典に収録し、動作チェックのために何度も何度も聴くことになり、ああ、このコーラスを入れている○○○さんはもうこの世にはいないんだなあとか思った。曲が明るくて前向きで情熱溢れる愛の歌だから、その歌を歌っている人がもういないという事実とのギャップが、なんともいえない堪らない感情となったのである。

 彼らのアルバムの中で、僕が個人的に1番好きだったのは「Kiss & kiss」という彼女がボーカルのバラード。普通のリスナーにはこの曲を聴いてもらいたいと最初は思った。だが、彼女の歌声をメインで聴くのは僕がやるせなくて悲しかったので、収録することをためらったのである。