Saturday, December 27, 2008

バンドマン来社2件

 今日は2組のバンドマンがやってきた。昼に来たのは先日キラキラレコード主催のライブに登場したバンドで、まだ学生で進路のひとつにバンド活動もあるのだという。まあ、進路というには生活の糧を得るための活動としてのバンドなのだが、要するにお金を稼げるようになるということを目指しているわけである。キラキラレコードは音楽で成功をするために努力できる人たちの壮絶な努力によって進んでいく企業であって、最初から「俺たち売れなくってもいいッス」なんて言っているようでは話にならないし、一緒に仕事をやる意味もない。だが、それと生活の糧をすぐに得られるようになるということとはまた別の話で、音楽に限らず、小説家や漫画家、プロスポーツに独立起業家など、自分の才覚で生きていこうとする人にはそれなりのリスクも当然覚悟しなければいけない要素である。一方でサラリーマンなど就職をするという場合、もちろんその能力の提供ということも含まれるが、すぐに企業の役に立つわけでもなく、しばらくはお金をもらいながら修行をさせてもらったりするし、そういう意味では誰しも最初のうちは時間を切り売りすることでお金をもらうという形であり、そういう意味では純粋に自分の才覚で生きていくということとは基本的に別の活動と言っていいだろう。
 
 自分の才覚で生きていく以上、そこには十分な展望、戦略というものが必要だし、予定通りにいかない場合の手当てというものも持っていなければいけない。だが、音楽で成功するということはそれほど確実性をもっていない世界でもあるから、そもそも戦略を立てるということが難しい。もちろんキラキラレコードには音楽で成功するための青写真というか、合理的なプランというもの、それについてのアイディアは沢山ある。いろいろなバンドがいて、それぞれが違った状況に置かれていて、それぞれの実情に合わせてそういったアイディアを組合せながら対策を練っていくわけだが、それでも確実ということではない。それは別にキラキラレコードに限ったことではなく、大手のレコード会社やプロダクションに所属しても、その中で成功を収める者もいれば、同じ時期に同じところに所属していても成功を手に出来ない者もいる。それは個々がどのくらい才能を持ち、努力を惜しまないかということ、あるいは運なども含めてどれだけ条件が揃うかによって結果もまた違ってくるということなのであるし、それ以前に成功というパイが少ないということが決定的な条件でもある。好景気の時と今みたいな不景気な時代では就職活動の成功可能性も違ってくるということと似ている。採用予定者数がそもそも違うのだから、同じ能力を有していても、景気が悪ければ採用が難しくなるということなのである。
 
 大学3年生が音楽で食っていくということと就職活動を同列に置いて考えるということは、そもそもが別のことなのだとは思うが、そう思うこともある意味当然のことでもあるし、その難しいことにチャレンジする時間はそれなりに残っている訳でもあるので、だからチャレンジしようという気持ちは尊重したいし、逆に卒業というタイムリミットがあることで、切迫感も生まれるし、いつまでに結果を出さなければいけないという思いが強くなることが、成功への近道になることもあるのだと思っているのである。フリーターをやって、いつでもいいんだという、そうは思っていなくても結果的にそういう状況に置かれることで、かえって目標が曖昧になるということも事実だ。
 
 例えばダイエットなども、漠然と痩せたいとだけ思っているようでは決して痩せない。なぜなら目標が曖昧だからだ。目標が曖昧というなら、目標を持てばいい。半年後に2キロ痩せる。これならかなりゆるめの目標だし、こういう目標でいいなら誰にだって出来るはずだ。でもその程度の結果だって、目標をハッキリ持たなければ痩せることはない。一方で3ヶ月後に友人の結婚式があるからそれまでにこのドレスを着こなせるようになりたいというような、タイムリミットを持った目標があったとすれば、痩せなければそのドレスは着られないわけだから、是が非でもという強くハッキリした目標が出来るわけで、そのドレスを着るために痩せなければいけない体重が8キロだとしても、痩せる可能性は高いだろう。それがいかに不健康な痩せ方であろうと、痩せるという単一の目標は達成するわけだ。
 
 学生バンドも、考え方が定まってなければ、卒業というひとつのリミットにその活動を妨げられる。だがその条件を逆手に取って自分たちの強みにすることができる。それは学生に限らず、フリーターであっても、正社員で働いている人であっても、立場の違いはあっても同じだ。要するに自分たちの置かれている立場というものがそれぞれあって、それぞれの立場でメリットもデメリットもあるはずだ。成功を得られない人というのは、実は何もやっていなくて、成功しない理由を自分の立場特有のデメリットにすり替えようとする。だから誰にも失敗する意味ありげな理由というものは存在する。でも同じ状況下にあっても成功する人もいるのだとすれば、そんな理由は意味がないことは明白だし、意味がないことを何万語積み重ねるヒマがあったら、その時間をプラスの方向に使った方がいいのになあと思うことはよくある。
 
 今日の昼に来てくれたバンドマンが僕との話にどのようなことを感じたのかはまだ判らない。彼らがこれからやろうとしていたことについてそれが本当に意味があることなのかということを結構シビアな言葉で批判もしたし、批判するだけではなくて、じゃあどうやればいいのかということも提案した。その上で今日来た2人はかなり何かを感じてくれたようだし、前向きに動いていこうという気持ちになってくれたようではある。だが、これを持ち帰ってバンド全員のミーティングになったときに、果たして全員が前に向けるのかどうかというと、それは未知数だと言える。前に向いてくれればいいのだが、すべての場合にそうなるほど、世の中は簡単ではないのだから。
 
 
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 一方夜のミーティングでは、既に何度も話を重ねてきた2人が来社。3028というユニットは、来年3月にシングルを出すことで合意していた。今回もその件でいろいろと話を前に進めるためのミーティングだった。この2人は年齢的にもお昼のバンドマンとはまったく違うし、やらなければならないこともまったく違う。だが、じゃあ本当に違うのかというと、実はそうではなく、基本は同じなんだと思うのである。それはどういうことかというと、いい作品を作り、それを世の中に広めるということ。もうそれに尽きるのだ。バンドメンバーが多いのと少ないのとでは広がるスピードも初動に於いては違ってくるだろうし、学生と社会人では自由に出来る時間も違う。だが、やることは同じである。いくら良い作品を作っても、知ってもらえなければ売れないし、知ってもらっても良い作品でなければ買ってもらえない。そのシンプルなことをやるんだ、しかも向目的的に合理的な戦略を立てて動く。もちろん自分の置かれている状況に応じた範囲でしか動くことは出来ない。だから夢想のようなことを考えたりしてもダメだし、一方で自分のしたいことだけをやっていてもダメなのだ。3028の2人も状況的に制限は多い。しかしながらやろうとする意欲、アドバイスを取り入れようとする貪欲さはちゃんと持っている。その前向きな気持ちで頑張っているが、一緒に話をしていると、どうしても自分の解釈でやってしまっている状況があるみたいで、こういうミーティングでその間違いを修正することが必要なんだなと思ったりする。まだまだ僕の説明なども足りないのだなあという思いを深めることになるわけだが、それも彼らのように特に反発することもなくミーティングの内容を実践しようとするバンドマンがいるからであって、やはり強い気持ちで動いている人との付き合いというのはどういう形であれ自分のためになるんだなあと思う。立場は違えども、お互いがお互いを刺激しあえるような人間関係をこれからも築いていきたいと思うし、そういう意味でも彼らの成功への取り組みが、少しでも前進していってくれることを願いたいと思うのである。