Friday, January 30, 2009

立場と役割の変化


 民主党の代表質問で無所属の田中眞紀子が登場。いやあ、なんかつまらなかったな。今朝のワイドショーでも精彩を欠いていると言われていた。その理由は彼女もキレがなくなったとか、発言の機会が少なくなったとか、コメンテーターたちが語っていたが、僕はそうではないと思う。昔からこういうことを同じように庶民にわかりやすい比喩でもって喋っていた、というか叫んでいたのだ。それが昨日の代表質問でつまらなかったように感じられたのは、それは田中眞紀子氏の攻撃のスタイルがTPOに合わなかったということだろう。端的に言うと「おおお、歯に衣を着せずにそこまで言うか」というのが、見てて爽快に感じられていたのである。今太閤といわれた田中角栄の娘であるという立場があり、その田中家を裏切ったという負い目を感じていた人たちが長く自民党の中枢にいて、その中で田中眞紀子は泳いでいた。地元の絶大な支持を背景に、党幹部へ媚びる必要もなかった。幹部たちはみんなオヤジに頭を下げまくっていた人たちだ。だから媚びる必要がたとえあったとしても、彼女の中の上下関係からいえばむしろ媚びるのは彼らの方だという意識があってできなかったのだろう。
 
 だから、彼女は毒舌を吐いた。それが橋本龍太郎であろうと、梶山静六であろうと屁でもない。一般的には党の幹部だ。絶大な権力を持っているのは誰もが認めるところである。誰もが彼らに跪いた。自民党員ならなおさらだ。でも、彼らの行動に一点の曇りもないのかといえばそうではない。でも誰もそれを言えない。そこで田中眞紀子の登場だ。ガンガンハッキリものを言う。わりと正論をベースに毒舌を吐いた。それは多くの人たちが心のどこかで感じていたことだった。人々は心の代弁者として、ハッキリと言う田中眞紀子に親しみを覚えた。
 
 だが、今回の代表質問で攻撃の対象となったのは麻生さんだし、それに伴い安倍さんと福田さんを攻撃した。ここではかつての発言と構図がまったく違う。「強大な権力者に対して、権力者のグループ内にいながら、悪口雑言を言う」というのがこれまでの田中眞紀子の発言だったのに対し、今回は「既に力を失っている名ばかりの権力者に対して、彼らと敵対するグループにいて、悪口雑言を言う」というものに変化していた。それなら誰もが言うし、普通なのである。日々マスコミは麻生さんの政権運営を非難している。野党議員も誰しもが言う。そんな中で田中眞紀子は同じようなことを口にしたに過ぎない。いくら表現がユニークであっても、それを言うという行為にスリルも意外性もない。だからつまらないのだ。敵を攻撃するだけならば辻元清美の方が論拠もあって切れが良い。田中眞紀子という名前には期待もあり、それだからこそ余計につまらない気持ちが増大したのだろう。