Monday, February 09, 2009

醍醐の春


 JR東海の京都行こうCMが新しくなった。醍醐寺。美しい。
 
 醍醐寺には2007年の春に行った。世界遺産に指定されている17の社寺を見て回りたいのだが、春には桜がきれいだというこのお寺、計画していた京都旅行数日前のニュースで「満開」と報じられていたのでそこに行くことにしたのだった。京都の街中からはちょっとだけ離れたところにあって、駅から寺まではちょっとした山登りの様相を呈する。その分若干標高が高いのだろうか。そういうこともあって、市中よりも早く桜が咲くのかもしれない。
 
 行ってまず三宝院という入り口すぐ左のところに行く。確かにそこの桜はきれいだ。だが、言うほどスゴイというほどでもない。こんなものかと正直思った。そして三宝院庭園に向かう人人人。人の波に押し流されるような見物は、なんか正直興醒めなのだった。三宝院を出て奥に行き、金堂とか五重塔のある辺りを散策。建物は若干塗装もはげ、手が入っていないような印象があった。えっ、これで世界遺産かと正直思った。他の世界遺産社寺が結構な趣を見せているのを知っているから、だからなんか興醒め感が輪をかけて襲ってきたのである。
 
 チケットはまとめて買うとお得だと言われて買ったので、まだ霊宝館を見ることができる。でも正直ここまでのガッカリ感が僕らを襲っていたから、もうここに時間をかけても仕方ないのかもしれないとか思っていた。限られた時間でもっと他の京都を楽しめるんじゃないか。そう思った。でも、まあせっかく来たんだから見てみよう、もう二度と山登りをしてまでここに来ることはないだろうから、ちょっとだけ見てもバチは当たるまい。そう思って霊宝館に向かった。霊宝館というのは、醍醐寺にある宝物を展示している建物である。仏様とか書画の類が展示してあった。でもそんなにすごくない。ちょっと前に国立博物館の仏像展を観ていた僕には正直ワクワクするほどの展示ではなかった。で、建物を出る。かなり興醒めの気持ちで建物の奥にちょっと行ってみた。人の流れがあったから。なんだろうとちょっと思って、つられるようにそちらに行ってみた。
 
 そこに桜はあったのだ。醍醐の桜。いや、豊臣秀吉が花見をしたという桜がそれかどうかは知らない。そうだとしても数百年の時を経て、同じ桜の形であるはずはない。だが、時を超えて秀吉がこの桜を見たとしても、いやあ、絶景だと感じたはずだし、世紀の大宴会を開きたいと思っただろう。僕もそこに立って感動した。桜を見て感動しやすい質ではあるが、それにしても桜の感動でいえば、僕の個人史史上ベストの桜だったのだ。
 
 そしてこの春、JRのキャンペーンが醍醐寺の桜。もちろん今年の桜はまだ咲いていないのだから、昨年以前の映像がそこには映っているのである。撮影した人は嬉しかっただろうな。もしかしたら僕が見た年の桜と同じだったのかもしれない。そう思うとまたワクワクしてしまう。この春も京都に行くつもりではあるが、醍醐寺に行く予定はない。もう見たし、まだ見ていない場所が沢山あったりするからだ。それに、このキャンペーンで注目も集まり、2007年以上の人出になるのは間違いない。でも、もしも京都で桜を見たいと思う人には、そのごった返しぶりを押してまでも行く価値はあると薦めたい。日本の美のひとつの形がそこにはあったから。