Tuesday, March 17, 2009

フランス人の来社

 夕方、仕事をしていたら会社の入り口にノックの音が。3年半前までカフェをやっていたスペースだし、今でもカフェの看板を下ろしてはいないので、間違った人がお茶飲みたくてきたんだなと思ったが、どうもそんな感じではない。外国の方だった。
 
 ゆっくりとした英語で、「ここはレコード売っているのか」と聞くので、違う、ここはレーベルだと答えると、「自分はグラフィックデザイナーなのだが、仕事をさせてくれないか」という話だった。立ち話でもなんなので、一応中に入ってもらう。(この辺が、飛び込みセールスと違うところだな。飛び込みセールスの人はズンズン勝手に中に入ってきてしまうし、だから、こちらも警戒してしまうんだ。)フランス出身の彼は半年前まで3年間韓国でデザイナーをやっていたのだが、いろいろとあって日本に移り、仕事を探しているとのこと。現在はワーキングホリデーのビザで滞在しているが、それもこの10月までで、それまでにはなんとか安定的な仕事を得たいのだという。まあ折からの不況で大変ではあるが、それでもなんとか音楽関連のデザインの仕事がしたいのだという。
 
 とはいえ、キラキラでもそうそう安定的に仕事を出せる訳ではない。そのことはまずハッキリとさせた上で、それでも彼が過去の仕事を見せたいというので見せてもらう。韓国で出版された本の装丁だとか、3Dソフトで作られたアニメとか、自らのハンドドローイングをPCに取り込み風合いのある着色を施したイラストとか、いろいろ見せてくれた。作風には人によって好みがあるだろうが、技術的には相当のもので、経験もそれなりに積んでいるんだろうと感じさせられた。大きな会社がこういう人を安定的に抱えておいて、それでいろいろと展開していったりすればまた新しいビジネスも生まれるのだろうと思うのだが、それもそう簡単ではない。
 
 一応知人の会社でそういうデザイナーのニーズがあるかもしれないなと思い、問い合わせをしてあげることを提案。もちろん確約は出来ないよということを伝えると、彼はとても感謝していた。なんでも、韓国では売り込みにいくとわりと簡単に会ってくれるけど、日本ではまず会うことがとても難しいという。コネクションがなければ話すら出来ない。それで今焦っているのだという。そうか、それはその通りだなと思う。そんな彼の話を聞いた僕が偉いということではないが、もう少しそういう出会いが簡単に行われるようになれば、いろいろな可能性はもっと広がるような気もするし、会うためのコネクションというものが既に既得権益のようなものだし、それで社会が硬直化するような気もする。
 
 
 一昨年までキラキラには韓国人のスタッフが勤めていたし、昨年はオーストリア人のCDをリリースしたし、有刺鉄線というバンドには新たにモロッコ人のボーカル(日本語の歌詞を歌います)が加入した。何となく周囲には外国人の姿が増えてきているようだ。外国人だからいいとか、日本人だからダメだとか、そんなことを言うつもりはさらさらないが、しかしこうして祖国を離れて日本で生きてみようと頑張っている姿を見ると、彼らのバイタリティには感心させられる。自分にはそういうダイナミズムはあるのだろうか。だからといって直ちに外国に行った方がいいのだという価値観ではないけれども、常に新しいことにチャレンジする、そういう気持ちは持ち続けていたいとか思った。