Friday, May 15, 2009

街頭演説会


 夕方、有楽町マリオン前で民主党の代表選候補者による街頭演説が行われた。4年前の夏、小泉首相の演説を見ようと思い、福岡の候補者山崎拓の応援演説に来たのを見に行ったことがある。やはり生で見るのはテレビとはまったく違うなということをその時に感じたのだが、だから今回も見ておきたいと思った。もちろん現時点では両者とも総理候補というには関門がまだまだあるわけだが、それでももっとも近い2人と言っても過言ではないし、その両者のどちらがいいのかなんて、本当のことはわからない。どちらが誰の支持を受けていてとか、数の上ではどちらで、地方組織の応援はどうとか、マスコミから聞こえてくるのは専ら権謀術策的な数合わせであり、それに対して若いとかまじめとかいう程度の反論があるだけである。そんなのは実はどうでもいいことだし、そもそもそういう政治になってはいけないと日頃言っているジャーナリストたちが、そういうことばかり蒸し返す。もしも1人しか立候補しなかったら「話し合いで密室だ」とか言っただろうし、2人立候補することになったら「挙党一致が崩れている、まとまっていない」とか言っている。そんなことを聞いても、本当はどっちがいいのかなんてまったくわからない。

 だから、直接この目で見たいと思った。ちょうど今日は夕刻に約束もなく、ネットで調べて有楽町へ。5時からの予定時刻に到着すると、議員さんがマイクを握っていた。今日の段取りを話していたわけだが、岡田・鳩山両氏の応援として長妻昭と原口一博が演説を、そして岡田・鳩山の両候補が演説するということだった。

 それで、全部の演説をみて思ったのは、両氏ともそんなに違いはないということだ。どちらも政権交代を望み、それが第一だと言っている。人柄もそんなに変わらないのだろう。そんな中で、僕は誰が演説がうまいのかということに着目した。みんなそれなりにうまい中、印象がダントツだったのはやはり長妻昭だと感じたのである。何故か? 演説は屋根の上に演説スペースが設置されたワゴン車で行われたのだが、今回の場所はマリオンと高速道路の間の細い道の脇で、四方を観衆に囲まれる状態になっていたのだった。もちろんマリオン前のスペースが一番広く、その方向に人ももっとも多く、テレビカメラもずらりと並んでいた。必然的にそちらがメインとなるわけだが、長妻氏はメインと反対のスペースにもまんべんなく振り向き、手振りを入れながら演説をしていた。なぜ民主党が政権を取らなければならないのかということにも年金を中心とした具体例を挙げ、共感を得るような話をしていた。話の内容は他の議員もそれなりに具体性を持っていて共感を得ていたと思うが、メインと反対の方向を演説中に見ていたのは長妻氏ただ1人だったのである。メインと逆側にいる人も話を聞きたいのである。話している顔を見たいのである。自分たちがメインじゃない方にいるんだということは判っている。だからずっとこちらを見てもらいたいなんて思ってはいないはずだが、それでも1回でも見てもらいたいとは思っているはずだし、今回のように他の3人が演説中に1度も見なかった中で、長妻氏だけが1度じゃなく3〜4度振り向いてくれたら、逆側にいた人たちには最高の印象になるのは間違いないだろう。

 これは、演説中にどちらを見たかというだけのことで、政策とは全く関係ないことである。しかし、そういうところに「配慮」というものはにじみ出るのだろうと思う。熱く語っても、一方向しか見ないというのでは、本当にその演説の内容を余すとこなく伝えたいと本当に思っているのだろうかと疑いたくなる。

 演説中は残りの3人はメイン方向だけしか見なかった。では、他の人が演説している間にどうしていたのかというと、原口氏と鳩山氏はメインと逆方向を時々振り向いていた。岡田氏は結局他の人(鳩山氏)の演説中一度もメインと逆方向を振り向くことはなかった。

 党内にいろいろとあるだろうということはよくわかるし、世代間の駆け引きなんかもあったりするので、そうそう新しい人が出るなんてことも難しいとは思うが、しかしながら今日の演説を見ていて思ったのは、もう若い世代で十分に力のある人がいるということである。長妻昭氏は国会論戦でも力を発揮しているし、今日の演説でも力があるなという印象を与えていた。こういう人を前面に出していけるようになっていけばもっともっと良くなっていくのだろうという気がする。だがそれも拙速に過ぎるのであれば、そういう人がゆくゆくはちゃんと力を発揮できるような状況が今のうちに出来るということがセカンドベストなのであって、それは、今回民主党が勝利するということに他ならないように思う。

 岡田であれ鳩山であれ、今回の代表選で代表になった人は全力を尽くして前に進んで欲しいし、敗北した方はとにかく裏方に徹して党の躍進のために尽力して欲しいと思う。そして今回負けたから次こそという形になったとしたら、それは自民党と同じだということを認識して欲しい。世代間の争いというものはあるが、基本的には先輩を立てるというのが一般的な常識だと思う。だがそれを通して民主党の代表経験者が全員総理大臣になりたいとか言い始めるととんでもないことが起きる。みんなそれぞれ力量もある人たちだとは思うが、それでも、自分が代表の時に政権奪取が出来なかったのがまずいのであり、そのことを考えても、岡田鳩山のあとには、その次を狙えるような40代50代の人たちが頭角を現していってもらいたいし、それが出来るような環境を生み出せる先輩たちであって欲しいと思ったのである。