Sunday, July 11, 2010

カノープスのサマソニについて



 現在キラキラレコード所属のバンドカノープスがサマソニ出場の企画にチャレンジしている。僕は彼らのチャレンジをTwitterでつぶやいたりして応援している。おかげさまで大変多くの方々に投票をしていただいているようで、連日順位が上がってきている。嬉しい限りだ。

 だが、僕はバンドがサマソニにチャレンジしようとすることを全面的に肯定しているのではない。どちらかというとむしろ否定的でさえあるのだ。

 サマソニに出たいというのは一体何故なのか。思うに、そういうところに出ているアーチストになりたいということなのだろう。とすれば、それは主催者側から「あなたが出てくれるとイベントが盛上がるので、ぜひとも出ていただけませんか。つきましてはギャラなどの条件は云々」という話をいただくということを意味するのであって、決して単にそのステージに上がることではないと思う。例えていうならば、「テレビに出たい」といって、ズームインの後ろに映り込むようなものだ。そんなことに懸命になったところであまり意味はない。

 今回のサマソニ企画については、ウチのレーベルでも他にたくさんのバンド達が参戦している。彼らのほぼすべてから「投票お願いします」といわれたりする。だが、僕は上記のような理由から、そのお願いをやんわりと断っている。彼らにはもっとやるべきことがあるのだ。そのやるべきことがなんなのかは個々のケースで違うけれども、まあ大前提として自力で数百の投票を獲得しておくことが大切なのではないか。その上でプラスαをお願いするのならまだわかるが、そもそも30票くらいの投票を得ている段階でお願いされても困る。そんなのを全部引き受けていたのであれば、僕は一体何バンドの投票をお願いしまくることになるのだろうか。それは不可能なことである。そういうバンドはライブの動員もほとんどなく、レーベルにお願いすればすぐに動員が増えるだろう、自分たちはさほど努力もせずに、と思っているケースが多い。それはバンドとレーベルの関係として正しいとはいえない。もちろん全部自力でと言っていたのでは、レーベルの役割など無くなってしまう。だから、必要な仕事は積極的にしていきたい。大切なのは両者のバランスなのだろうと思うのだ。

 また、サマソニに出たいという時に、バンドの気持ちとしてどこを向くのかということも問題だと思っている。自分が出たくて、そこに道を開いている主催者のルールに乗っかり、ひたすらそのルールばかりを意識する。そこにはファンへの視点が欠落しやすいという落とし穴が待っている。このことに気がつかないバンドマンは実に多い。もちろん自己満足を否定するつもりなどない。ある程度の自己満足が根底に無ければ創作活動など出来ない。だがその創作物や活動がポピュラリティを得るためには、自己満足だけではダメだと思っている。リスナーへの意識。別に配慮などする必要はないし、媚びるなどはもっての他だ。だが、リスナーを意識して、リスナーの応援に活動が支えられているという気持ちが欠けたら、その音楽活動は基盤を失うだろう。だが、サマソニの主催者を課題に意識することで、リスナーやファンへの意識は薄らぐ。それが最大の問題だと思うのだ。

 そして、そういうリスナーへの意識を失ったバンドの音楽活動を、僕はレーベルとして否定するし、そういうバンドをリスナーへ紹介するのは僕の仕事ではないと思う。むしろ、そういうバンドを排除することこそ、僕の大切な仕事だろうと思うのだ。

 だからサマソニだけでなく、他のフェスなどに「出たい」ということを最大の目標にしているようなバンド達を諌め、教育し、もっと大切なことを伝えたいとずっと願ってきたし、実践してきている。その結果活動内容が着実なものになっていったバンド達も少なくない。そのことを僕は誇りに思っている。

 では、なぜ今回カノープスのサマソニチャレンジをTwitterでつぶやき、応援しているのだろうか?

 それは、カノープスを紹介に値するバンドだと思っているからである。

 今回出場できればいいが、別に出られなくてもいいと思っている。純粋に得票が出演を決定するのではないし、審査員なる人たちの評価というブラックボックスを通過させるという仕組みには少々のうさんくささも感じるし、そこで選ばれようと選ばれまいと、それは大きな問題ではないのだ。だが、今回彼らは自力で1000票以上の得票を獲得してきたし、1月のリリース以降も順調に活動を展開している。ライブの動員も悪くないし、何より、曲とパフォーマンスが良い。今回僕がサマソニに関連して彼らを紹介すれば、それは彼らの後押しにもなるし、同時にキラキラレコードのことに多少なりとも関心を持っていただいている人たちに対して、押しつけではない、良い音楽の紹介という、レーベルとしての大きな役割を果たすことになる。それはサマソニがどうこうではなく、バンドにもリスナーにもレーベルにもプラスになることだと思ったのだ。

 無論、キラキラレコードにいる良いバンドはカノープスだけではない。有刺鉄線も確実に結果を出してきている素晴らしいバンドだ。STONE FREEだって先日ワンマンを成功させたばかりである。他にも良いバンドはたくさんいる。彼らのそれぞれの活動に応じた応援をして行きたいと思っているし、実際に行っている。その中で、たまたま今回はカノープスをサマソニに関連して応援しているというだけのことだと思っている。

 あと2日でこの投票は終わる。もしかしたら出られるかもしれないし、出られないかもしれない。いずれにしても、カノープスの活動は終わらないし、キラキラレコードの活動も終わらない。サマソニは単なる通過点に過ぎず、もっと先のことに向けて、着実に歩みを進めて行かなければならないのだ。そういう意味でも、出られようが出られまいが、そんなことは些細なことに過ぎない。しかし、今回この企画を通じて出会えた人たちの貴重な投票は、その一つ一つがカノープスにとってもキラキラレコードにとっても、大きな財産だと思うのである。

 だからあと2日だけ、僕はこのことをつぶやいたりするだろう。投票最終日には有刺鉄線のライブにも行くし、もちろん他のバンド達の仕事もし続ける。彼らのレーベルに対する期待は大きくて、とてもじゃないがそれに全部応えるなんて出来ないだろう。だからこそ、僕だけではない他のスタッフにも頑張ってもらいたいわけだが、当然それだけで足りるわけもなく、投票というかたちで協力してくれる人たちの力を、僕の弱い心は頼りにしたりするのだ。

【カノープスのサマソニチャレンジはこちらです。】
http://emeets.jp/pc/artist/3152.html