Monday, August 22, 2011

適正

 僕はほとんど知らなかった。でもTLでは比較的多くの人たちがネットで中継を見ていると言っていた。フジテレビでの抗議デモだ。

 フジテレビが韓流をたくさん流しているという話は聞いている。真偽のほどはよく知らないが、昼の再放送の枠で韓国ドラマを流しているのは知っている。だが、それはフジに限ったことではない。他の民放もそうだし、NHKだって盛んにやっている。それが悪いことかどうかは知らない。悪いと思う人は見なければいいだけの話と個人的には思う。みんなが見なければ視聴率は下がるし、下がれば番組は別のものに変わるだろう。

 テレビが国民を洗脳するという。確かにその側面はないとはいえない。だが、韓流のドラマ流したくらいで洗脳か?そんなことよりは教科書で円周率を3で計算させようとしたゆとり教育の方が何倍も罪だ。そっちでデモやらずになんだろうなって思う。

 デモについては、ツイッターのTLを見た後、どこかで中継をやってないかと思って検索などしてみた。ニコ生の最初のページに出てきていた中継があったのでクリックしてみた。すると、フジテレビの近くらしき場所に街宣車的なものの上に登って演説している地方議員たちの姿があった。誰が何のためにやっているのかまったくよくわからない。判らない理由は他にもある。その中継をやっている桜なんとかというところの中継はすぐに切れるのだ。満員になったから会員になってくれと盛んに言ってくる。再ロードしたらまた中継が見られるようになるのだが、それも1分くらいで、下手すると5秒くらいで切れる。何度か繰り返してみたが、何度やっても会員になれと言われる始末。そんな怪しいものの会員になどなりたくないし、そもそも見知らぬ地方議員の怒号を聞きたいとも思わないので、すぐに消した。それが僕のフジテレビデモ体験のすべてだ。

 デモをする権利は誰にでもある。そのことはまず前提として確認しておきたい。誰にでもデモをする権利はあるのだ。

 しかし、デモをする権利が過大になって、第三者の他人に迷惑をかけるようなものになってはいけないと思う。なんでもそうだ。権利というのはただ権利で存在するのではない。権利は常に義務と一体であるべきである。

 311以降、活動家ではない一般の人たちのデモへの参加が増えてきたという。それ自体は悪いことではない。僕は6月だったか、デモの場面に遭遇したことがあった。京都河原町三条の交差点あたりで、けたたましい音をあげる集団がいた。太鼓やラッパを鳴らしながら行進をしているのだ。正直言って、うるさかった。うるさくて耳を塞ぎながら足早に通り過ぎた。だから、それが何のデモだったのかなんてよくわからない。現場に居合わせた人はみんな同じだったんじゃないだろうか。だとしたら、デモの意味はなんだったのだろう。主張があって、それを伝えたいからデモをするのではないのか。うるさ過ぎて伝わらないんだったら意味がない。彼らは堂々と大きな音をならす大義名分が欲しかっただけだったんじゃないかと思った。多くの人に気付いてほしい大事な主張なんてなかったんじゃないかと。

 今回のフジでの抗議デモがどういうものだったのかは僕には判らない。だが、韓流に偏った放送をすることがダメなのだとしたら、フジ以外のテレビ局だってもっとやり玉に上がっていいはずだ。さらに言うなら、彼らはCDショップに行ったことがないのだろうか。CDショップなど韓流の嵐である。KARAや少女時代がそんなに売れてんのって言いたくなるくらいに韓流の商品で溢れかえっている。東方神起になんとかかんとか。名前すら知らないグループの商品まで大量にある。彼らのCDが実質的に売れているかどうかは判らないが、全体的に日本のアーチストのCDも売れていない中で、それなりに健闘しているんだろう。そうでなければあそこまで店頭展開などできやしない。韓流がダメでデモをするなら、CDショップも対象にしないといけないだろう。だが、それをするなら日本のバンドやアーチストのCDを買ってからだ。普段CDを買いもしない人に限って韓流を批判するんじゃないかと僕は感じている。

 知り合いにも韓流のファンは多い。日本でイベントがあればガンガン行くし、グッズも買いまくりだ。場合によっては韓国でのイベントにまで追いかけていく。知人として見てて「どうか」とは正直思う。だが、彼女たちが洗脳されているとは思わない。もしも洗脳する術があるなら、日本のタレントやグループがとっくにやっているだろう。なんか魅力があるのだ。彼らにその魅力が出せて、日本のタレントやバンドがその魅力を出せないとするならば、それは日本のタレントたちがなにか負けているということに過ぎない。そのことに怒るのなら、日本のタレントの活動をもっと追いかけたり夢中になればいい。その対象がいないんだとしたら、やはり日本の芸能が韓流に負けているということだろう。そうなれば、テレビが視聴率を取るために韓流をたくさん出すのは当たり前の選択ということになる。

 話を戻そう。今回のフジテレビデモについて、僕はやはり適正を欠いていると感じた。みんななにかのネタが欲しかったのだ。多くの人にアピールする機会を得たい地方議員たち。会員登録を増やしたいニコ生のチャンネル主。騒ぐための大義名分が欲しかった群衆。それらがわっとフジテレビネタに飛びつき、活動をする。折からのデモ機運に乗ろうとする、純粋に正義感のある人たちも、その正義感を示す機会が欲しかったのだろう。で、結局デモが行なわれた。得をしたのは誰なのか。損をしたのも誰なのか。詳しく分析したりなどしないが、今回のことをちゃんと整理して理解しないと、今後ちゃんとデモをしようという際に「あの時は」ということになりそうな危機感さえ感じた。何事もそうだが、本当にこのことを訴えなければというきちんとした思いが、デモをする際の前提だと思う。それを誤ると、今度はきちんとした思いが正しく伝わらなくなってしまうんだと、ちょっと思った。