Tuesday, June 21, 2005

売るということ

 いろいろなバンドといろいろな関わり合いを持っている。で、CDが売れるバンドと売れないバンドの差というのは結構歴然としている。では、売れるバンドと売れないバンドの間に、センスとかレコーディングのクオリティという点でなにか明確な相関関係、例えばカッコいいから売れているというようなものがあるかというと、実はないのだ。
 インディーズで求められているセールスというのは何十万枚ではない。数千枚なのだ。確かに数千枚というレベルに達したあたりからセンスは問われ始める。だが、3桁のうちは、センスがどうとかいう問題ではない。要はやる気があるかどうかということと、自分自身で自分の音楽を大切に思っているかどうかということ、それだけが問われているのである。どういうことかというと、最初の1000人くらいまでは、結局友人の応援による部分が大きい。その友人に対して、本当に真剣にやっているという印象を与えられれば1000枚程度は売れるし、あいつらいい加減にやってるなと思われれば、1枚だって売れる訳がない。よくバンドが「CD1枚1500円くらいにしないと売れないですよ」というが、それは間違いだ。最初の1000人くらいの間は、安いから買うのではない。やっている人の頑張りを応援するから買うのだ。そしてその先の直接知らないユーザーは、これまた安いから買うのではない。気に入ったから買うのだ。だから気に入ってもらって買ってもらえるようになるまでは、ひたすら頭を下げまくって身近な人に買ってもらうべきなのである。その頭の下げ方に真剣さは現れる。頭を下げてまで買ってもらわらなくてもいいと思う間は、そのCDは売れないし、売る価値もないものでしかないのだと思うし、思われても仕方ないのではないだろうか。
 友達が少ない人はどうすればいいのだろう。そういう質問もあります。もしそうなら、友達を増やせばいい。それも出来ないなら、ストリートに出て毎日歌えばいい。それが王道だとは言わないけれど、ほかに方法論がなくて家で悩んで売れないままでいるくらいなら、ストリートに出て少しでも聴いてもらえるチャンスを探っていった方がよっぽどいい。そうやってコンスタントに活動を続けていけば、そして売る側の気持ちがしっかり強いものであれば、CDなんて着実に売れるものだ。そうやって売る姿勢がないバンドに対して、ちゃんとしたスタッフは興味を示さないし、ファンだって応援する気にはなれないものなのだ。

Wednesday, June 15, 2005

環境を変えるのか? 自分が変わるのか?

 ウォーキング中にブックオフに入りました。そこで手に取ったのはさゆりという本。アーサーゴールデンの原作で、チャンツイイー主演で現在映画制作中です。で、何故その本のことを話題にするかというと、オビに書いてあった言葉が非常に印象的だったからです。その言葉とは、「ここで我慢するしかないんや」みたいなもの。正確ではないですが。で、これに似た言葉をごく最近耳にしたことがあるわけです。それは先日のテレビ番組で、ワハハ本舗の劇団員全員集合という感じの特集があって、ある団員のエピソードが披露されました。彼は先行きに不安を感じ、ワハハを辞めようと思ったらしいのですが、久本雅美から止められたというのです。「あんたな、環境が変わっても自分が変わらなければ意味がないんだ。だったら他に行こうなんて思わないで、ここで頑張れ」と言われ、それで今でもワハハにいるんだと。
 キラキラにはいろんなバンドがいますし、アプローチしてくるバンドも数多いです。そういう彼らから問われる代表的な質問に「キラキラは何をしてくれますか?」というものがあります。そう問われたときに、僕は困るのです。
 彼らは明らかに、他のレーベルではできなくてキラキラだったら出来ることは何なんだということを知りたいんだろうと思うわけです。でも、国から特権を与えられている訳でもないのだから、他のレーベルに絶対に出来ないことが出来るなんてことは言えないだろうと思うんです。
 キラキラレコードで活動しているバンドが全部同じ成果を出しているのであれば、キラキラの力でそうさせてあげたと言ってもいいのかもしれませんが、実際には個々のバンドによってまったく違った結果になっていて、やっぱりそのバンドの様々な実力が結果に直結するんだろうと、僕は思うわけですね。
 それは予備校みたいなものではないでしょうか。授業の善し悪しは確実にあると思います。でも、どんなに評判のいい予備校でも、そこの学生が全員合格するわけではありません。結局は、その予備校という環境を最大に利用して、自ら勉強した人が合格していくということです。それは、バンドにも言えることで、インディーズレーベルでCDを出したということに満足していたら、その先は開かれてこないし、そのCDを利用して発展につながる活動をやっていくバンドは、その頑張りに応じてちゃんと成果を上げているのです。
 僕は、環境を変えることがまったく無駄だとは思いません。環境を変えることで意外と状況が変わることもあると思います。でも、だから環境を変えることが全てプラスだというのもまた嘘だと思うのです。環境を変えるということが心機一転につながり、その結果頑張りが実現すればいいのですが、環境を変えるということが現状からの逃避であれば、移った先の新たな環境の中でも、結局は現状と同じ閉塞感の中で挫折するでしょう。だとすれば、もし自分が現状を変えたいと思ったときに、いったい何をどう変えたいと思っているのかということを真剣に考える必要があるのでしょう。
 キラキラレコードでは、うちで成功しないバンドは他所に行っても成功するのは難しいと考えています。もちろん、特殊なコネクションを持った事務所に移ったりすることで、メジャーデビューを果たすことが出来たりするかもしれません。でも、それは本当の意味での成功ではないし、そこの後ろ盾がなくなれば簡単に切られていくでしょう。本当の成功とは、ちゃんと自覚があり、自分でやるべきことに努力する力を持ち、自立した音楽活動をしていける強さを持つということだと考えるわけです。だからこそ、キラキラレコードでは自らの努力を促すような努力をしていくレーベルでありたいと考えているし、現状に必ずしも満足していないバンド(バンドじゃなくてもですけれど)には、満足いく結果に至っていない原因を環境とか他社に見つけようとするのではなく、自分のなかに原因があるのじゃないかと疑問を持ってもらいたいと思うのです。まあ、そう考えられる力を持っている人であれば、不満に包まれることもないのかもしれないのですけれどね。

blog開始

キラキラレコードの日記は既にもう5年くらい書き続けているけれど、
それとは別に、ブログも始めてみることにしました。
日記はより個人的な内容で、これからも続けます。
こっちはもっと公的な立場での発言です。
でも、公的とか私的とか、どこかの国の総理大臣みたいですね。